平成29年度 入学式 校長式辞

本日は、東京都立白鷗高等学校及び東京都立白鷗高等学校附属中学校、平成29年度、入学式にあたり、ご多忙にもかかわらず多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席を賜りましたことを、まずはじめに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。

ただ今、中学校160名、高等学校236名の皆さんの入学を許可いたしました。

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。まず、高等学校から新たに白鷗の一員となった皆さん、白鷗へようこそ。中高一貫教育校の中でも併設型である本校では、高等学校から新たに入学する生徒の皆さんが、清新で活気あふれる新しい風を学校に吹き込んでくれることをとても嬉しく思っています。そして、附属中学校から進学した皆さんは、義務教育を終え、通う校舎は同じでも、一段階段を上るように、成長し新たな心持でいることと思います。今年度から、皆さんは入学時期による区別なく、同じホームルーム教室で机を並べることになります。新鮮な開かれた環境ができることは、皆さん全員に良い意味をもたらすと私は確信しています。今のフレッシュな気持ちを失うことなく、ますます学業に行事に部活動等に励んでほしいと思います。

小学校を卒業し附属中学校に入学した皆さんは、大変厳しい入試を勝ち抜いて、今日ここにいます。うれしくまた誇らしく思っていることでしょう。合格を喜んだその時の気持ちを忘れず、白鷗への入学を願いながら叶わなかった多くの人たちに恥ずかしくない充実した中学校生活を送れるよう努力してください。

私たち教職員一同は、皆さんの入学を本当に心待ちにしていました。数多くの学校の中から本校を選んでくださったことをありがたく思い、その期待に応える責任の重さを痛感しています。私は、教師として、常に胸に刻んできた言葉があります。それは教育学者ウィリアム・アーサー・ワードの次のような言葉です。「凡庸な教師はただしゃべる。少しましな教師は理解させようと説明する。優れた教師は自らやって見せる。本当に優れた教師は心に火をつける」この「心に火をつける」英語ではinspireと言っていますが、私たちは、皆さんの「心に火をつける」存在になれるよう、努力をしたいと思っています。

今年は、校門前の満開の美しい桜が散り急がずに皆さんの入学を待っていてくれました。「昨日より、今日よりも今、桜かな」この一句は、昨日見た桜より、今日見た桜より、まさに今の桜、目の前の桜をめでようという意味ととれますが、時の流れの中で、命短い桜に託して、過去を振り返るのではなく、今を懸命に生きなさい、と言っているようにも思えます。新入生の皆さんには、新しい学校生活を、夢と希望をもって、まさに今の一瞬、一瞬を大切に、大いに学び、楽しみ、笑い、また泣き、時に怒り、悩みや苦しみに正面から向き合ってほしいと願っています。

さて、白鷗が一年後に本格的にスタートする国際色豊かな教育環境の充実に向けて準備を進めていることは皆さんが既にご存じのとおりです。グローバル化の進む時代を生きる新入生の皆さんは、もちろん役立つツールである英語の力をつけることも大変重要ですが、それ以上に肝心なのは、異なる文化や異なる価値観を認めた上で、堂々と自分の意見を述べ、競い合い助け合うことのできる強くしなやかな心を育てることだと思います。これは言葉で表すのは易しくても、実際にはとても難しいことです。異なる文化や価値観を認めるには、自分が目にしたり体験したりしたことのない未知のものに対して、先入観にとらわれることなく、自由に想像力を働かせることが何より必要ではないかと私は考えます。人はだれもが未知のもの、未体験のものに対しては漠然とした不安や恐怖心をいだきがちです。

皆さんの中には本校に入学して、これまでより格段に生活圏が広がったり、電車通学という新しい体験をする人もいるでしょう。物理的な世界が広がるのをきっかけに、是非心の中の、イマジネーションの世界も広げてほしいのです。皆さんが本校で多くの教科・科目を学習したり新たな友だちを得たりすることは、皆さんが想像力を広げる上で大いに助けになると思います。

たとえば、今自分が取った一つの行動がその先に周囲にどのような影響を及ぼすかを想像してみる。たとえば、となりにいる友だちが人知れず悩んだり苦しんだりしているかもしれないことに思いをはせてみる。あるいは地球の反対側で、中学1年の皆さんよりはるかに幼い女の子が、毎日片道5キロの道のりを、水くみのために往復している姿を思い描いてみる。自分の価値観とは異なる考え方がどうやって成り立っているのか、積極的に知る努力をする。そうして固定的な考えにとらわれることなく、想像力を広げていくことで、これから自分の果たすべき役割や、自分が信じることのできる価値を新たに見出すことができるのではないでしょうか。

白鷗は、明治二十一年の創立以来、今年で129年を数える伝統校です。受け継がれる教育理念である「開拓精神」とは、新しく道なき場所に道を切り拓く、変化を恐れず意志と努力で自らを開発していく心構えです。皆さん一人一人が本校の新たな伝統を作っていくとの気概をもって日々を有意義に過ごしてくれることを私は心から願っています。

さて、保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。今日まで、深い愛情をもって慈しんでこられたお子様を大切にお預かりいたします。併設型中高一貫教育校である本校に対して、大きなご期待をいただくと同時にご心配やまたご不安をお持ちの方もいらっしゃることと拝察いたします。何かございましたら、どうぞ遠慮なく身近な教員にご相談ください。私たちはどのようなご相談やご意見にも真摯に耳を傾け、また課題を解決していく心構えでおります。

一方、お子様方自身も、それぞれ中学生や高校生になることで、自分が一段階段を上り成長したということを自覚していることと思います。保護者の皆様には、少しずつ手を離しつつ、なお目は離さず、の適度な距離を保って、見守っていただければありがたく存じます。特に規則的な生活を送り、必ず時間を守る、家庭学習の時間をきちんと持つという基本的生活習慣においては、ご家庭でのご指導に負うところが大変大きくなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。私どもは、保護者の皆様と手をたずさえながら、お子様の豊かな成長に寄り添い、大切な時を共有していきたいと考えています。
保護者の皆様、またご来賓の皆様をはじめ、双鷗会、鷗友会、後援会の皆様、地域の皆様には、今後とも本校の教育に、一層のご理解とご支援を賜りますよう改めてお願いを申し上げます。

本校に対する皆様方のご期待に応える教育を教職員一同推進して参りますことをここにお誓い申し上げて式辞といたします。

平成二十九年四月七日
東京都立白鷗高等学校・東京都立白鷗高等学校附属中学校長 善本久子

平成28年度 附属中学校卒業証書授与式 校長式辞

本日は、東京都立白鷗高等学校附属中学校第十回卒業証書授与式にあたり、多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席をたまわりましたことを、始めに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。

百六十名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんが心も体も一段と成長して、胸を張ってここにいる姿を見る時、私も大変誇らしい気持ちになります。皆さんは、本校での3年間、高校に長く伝わる「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、熱心に学習に取り組み、確かな学力を身に付け、本校ならではの特色ある行事や部活動に全力で取り組み、多くの友達を得て、思い出を心に刻んだことと思います。今年はとりわけ陸上部が中高一貫教育校開校以来運動部として初めて全国大会に出場したのをはじめ、皆さんの素晴らしい活躍が多く見られました。

中高一貫教育校の中学3年生というのは過ごし方がなかなか難しい面があります。特に本校の皆さんは、東校舎から西校舎に移り、一足早く高校生の仲間入りの気分を味わいつつ、本来ならば最上級生として大いに自我を拡張できるところを、末っ子として何かと心細く窮屈なこともあったのではないかと思います。一般的には中だるみなどと言われる中で、皆さんは少しもそのような心配を感じさせない生き生きとした姿を見せてくれました。高校受験という通過儀礼の機会のない皆さんに、今年は英語の力を伸ばそうということで目標を設定しましたが、皆さんのうちの実に9割が英検準2級以上に合格、およそ三分の一の皆さんは、高校卒業程度と認定される2級以上を中学校卒業までに取得するという快挙を成し遂げてくれました。

グローバル化の進展する時代を生きる皆さんは、そのコミュニケーションツールとしての英語の力を伸ばすことももちろん大切ですが、本当に世界の人々と手をたずさえて心豊かに生きていくために重要なものは実は英語力ではないと私は思っています。ではその重要なものをお話ししましょう。

それはイマジネーション、想像力ということです。人生の時間は限られていますし、誰もが1回きりの人生です。経験できることは一通りでしかありません。その人生に豊かに広がりをもたらしてくれるのは、自分の目の前に見えないものや実際には経験できないことを想像する力、イマジネーションをもつことだと私は思っています。それもできるだけ自分から遠いものを想像すること。見知らぬ誰かの喜びや感動や悲しみや苦しみを想像して共感することを大切にしてほしいのです。そうしたイマジネーションを助けてくれるのが、本を読むことだったり、芸術を味わうことだったりします。「思いやり」という言葉は、もともと自分の思いを自分から離れた場所へ送るという意味です。イマジネーションを豊かにすることで、皆さんの世界は物理的にも心理的にも大きく広がるはずです。

中学校を卒業するということは、義務教育の修了という意味も持っています。小学校からの九年間の義務教育を終えるということは、皆さんにとって大変大きな人生の節目の時ということができます。義務教育は、日本の法律においては大人が子供に教育を受けさせる義務であるということは以前お話ししました。世界の中には教育を受けることが子供の義務であると法律に明記してある国もあります。義務教育を終えるにあたっては、学ぶことの意味をもう一度かみしめてほしいと思います。

世界中の十五歳から24歳の若者の識字率、文字を理解できる人の割合は、日本をはじめとする先進国ではほとんど百%に近い数字ですが、アフリカや南アジアの一部には、80%を下回る国や地域もあり、とりわけ、これらの国々では、男女の識字率の差が非常に大きくなっています。女子に教育の必要はないという考え方は根強く、貧困であるがゆえに教育の機会に恵まれず、職に就くこともできないため貧困から抜け出せないという悪循環もなかなか解消することは難しい面があります。世界の中にそのような同世代がいることを想像してみてください。

日本は中学・高校にあたる中等教育では、世界一男女等しく教育の機会が与えられている国です。そして白鷗中学校の皆さんは、能力やあるいは環境・機会というものに恵まれた人々だと言えると思います。その恵まれた能力や機会や環境を果たして十分に生かしているでしょうか。3年に一度、世界の十五歳の子供たちの学力や学習環境を調査しているPISA、OECD生徒の学習到達度調査の結果によれば、日本の15歳は、いずれの分野でも極めて高い学力をもっていながら、たとえば数学が好きだ、数学が役に立つと感じていると答える割合が、他国と比べて非常に低いと言われています。

学びの原点は、知的好奇心、知りたい、学びたいと思うことです。そして学びを面白いと感じることです。強制されていやいや学ぶことは、決して本当の意味で身に付くことはありません。義務教育を終え、白鷗高校への進学を前にして、もう一度学ぶことの楽しさや意義を感じて、来るべき高校での進化した学びにワクワク・ドキドキ、期待感をもち、より一層の学習のモチベーションの向上につなげてほしいと私は心から願っています。

さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとりまして、九年間の義務教育の修了は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。保護者の会である「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。引き続き、白鷗高校におきましてもご支援をよろしくお願いいたします。また、ご来賓の皆様をはじめ、近隣の皆様には、本校の成長を温かく見守っていただき、多くのご声援をたまわりました。あらためて深く御礼を申し上げます。

本校を卒業し、自分の望む進路を切り拓くために白鷗を離れ新天地へと羽ばたく皆さんもいます。生徒としてはお別れですが、白鷗はいつまでも皆さんの母校です。新しい学校での活躍を心から期待しています。どうか頑張ってください。

結びに、これは高校の卒業式でも同じ言葉を言いました。去年1年間、世界中でつぶやかれたツイッターのメッセージの中で、3番目に多くリツイートされた言葉、若い人々への励ましの言葉をはなむけに皆さんに贈ります。Never doubt that you are valuable and powerful & deserving of every chance & opportunity in the world. あなた方一人一人が価値のある、力強い存在で、この世界の中であらゆるチャンスや機会に値するということを、絶対に疑わないでください。

卒業生の皆さんの輝ける未来を期待し、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

平成二十九年三月十八日
東京都立白鷗高等学校附属中学校長 善本 久子                               

平成28年度 高等学校卒業証書授与式 校長式辞

本日は、東京都立白鷗高等学校第六十九回卒業証書授与式にあたり、多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席をたまわりましたことを、はじめに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。

卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。今226名の皆さんの誇りに満ちた姿を見るとき、本当に感慨深いものがあります。

皆さんは縁あってこの白鷗で学び、「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、たゆまぬ努力で確かな学力を身に付け、悩みや葛藤の中にも生涯忘れえぬ思い出やかけがえのない友を得たことと思います。そしてそれぞれが自分の進路を切り拓き、今日新しい道へ踏み出します。皆さんは、都立の中高一貫教育校という新しい枠組の学校である本校を選んで入学してくれました。とりわけ、高校から入学した皆さんは、既に学校生活に慣れている生徒の中に、新しい風を吹き込んで開かれた集団にしてくれたと思います。

思い起こせば、皆さんが白鷗中学校に入学したのは、今から6年前、東日本大震災直後の社会の不安と混乱のさなかでした。入学式の実施さえ危ぶまれる中で、皆さんを無事に迎え入れることができて、教職員一同はどれほど嬉しかったことかと思います。若くエネルギーにあふれ、未来のある皆さんの存在こそが私たち大人の「希望」でした。そして、その2年半後には震災の復興を象徴するオリンピック・パラリンピックが東京で開催されることが決まり、現在は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて本校でもさまざまな取組が行われています。皆さんの白鷗での年月は、この国が未曾有の災害を乗り越え、復興へと一歩一歩進む時間と重なっています。

今年度、最上級生となった皆さんと面接をする中で、自らの夢をこんなふうに語ってくれた人がいます。「東日本大震災を経験して、代替エネルギーの研究にたずさわりたいと思うようになった。」「病気のおばあちゃんをずっと見てきたので、医療関係の仕事に就いて、病気を治す手助けがしたい。」このような夢をもつ皆さんを私は本当に誇りに思います。いつの日にか、皆さんが中学・高校時代を振り返り、「日本が歴史上でも経験したことのなかったような大きな災害を経て中学・高校と学んだけれど、あれからこの国は懸命に努力して、復興してきた。生きていくために本当に大切なものを見つめて、人に優しい温かい社会を作ってきた。」と言える日が来ることを私は願っています。震災から6年が過ぎ、東京で暮らしていれば、その爪あとを意識する機会は少なくなったようにも見えますが、一方で東北地方では、まだ人々が困難な状況からの復興に向けて闘っています。私たちは常にそのことを心に留めておかねばならないと思っています。

皆さんは、能力やあるいは環境・機会というものに恵まれた人々だと言えると思います。そして皆さんには、その環境や機会を生かし、能力を最大限に伸ばして、幸せな人生を送ってほしいと私は心から願っています。同時にその幸福を追求する中にも、自らが正しいと信じる道を人々と協働しながら歩むことができる人であってほしいと思います。このことは言うは易く行うは難し、です。今世界中で起きていることの一面は、能力や環境に恵まれて成功した人々の説く正しさや理想に対するある種の反発、と言えるのかもしれません。「そんなことより自分が大事だ、理想を言っては生きていけない。」と。皆さんには、困難な状況にあって正しさを追求することの難しい人々の痛みや苦悩に心を寄せながら、それでもなお理想に近づけるよう、正しい道を歩めるよう、共に手を携え人々を導くことのできる人であってほしいのです。白鷗が目指してきた、「世界で活躍することのできるリーダー」とはそのような意味だと私は思っています。

東日本大震災直後にカリフォルニア各地の高校を訪問した私の友人は、どの学校にも必ず目立つ場所に日本への募金を呼びかける箱が置かれているのに非常に驚いたといいます。果たして私たちは、この6年間そのように見知らぬ人々を想像して寄り添うことができたか、と反省させられます。

どんな時代であっても、自分たちさえ良ければよい、という考え方が望ましいはずはありません。世界には、違いを認めようとしない排他的な空気や憎悪が広がっているようにも見えます。しかし多様であることを認める社会というのは、私たちが生きやすい社会だと私は思っています。皆さんは、自分は何者なのかというアイデンティティをしっかりもちながら、異なる価値観を認め、人種、国籍、性別、宗教、といったダイバーシティ(多様性)を互いに尊重し合えるよう、自分だけでなく周囲の人々をも巻き込み、理想とする社会の実現に努めるリーダーに成長することを願ってやみません。

さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとりまして、今日の佳き日は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。これまで生徒の皆さんと過ごしてきて、その真面目でひたむきな姿に私の方が救われることがたくさんありました。これも保護者の皆様の慈しみのたまものと感服いたします。これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。保護者の会である「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。引き続き、「後援会」としてご支援をいただければありがたく存じます。また、ご来賓の皆様をはじめ、近隣の皆様には、本校の成長を温かく見守っていただき、多くのご声援をたまわりました。あらためて深く御礼を申し上げます。

センター試験の前日、皆さんの健闘を祈って片目を描き入れたダルマに、今朝早く、大願成就を祝い、両目を入れました。試験の結果がどうあれ、皆さんは全員が勝者です。勉強の努力は決して皆さんを裏切ることはありません。真摯な努力によって身に付いた学びは、必ず皆さんのこれからの人生で助けとなってくれるはずです。

今皆さんは、卒業して新天地へはばたく喜びと共に、別れの寂しさを感じてもいることでしょう。「ほんとうに出会った者に別れはこない」谷川俊太郎さんの詩の一節にこのような言葉があります。白鷗での出会いは「ほんとうの出会い」であったことと思います。生徒としてはお別れですが、同窓会である「鷗友会」を通じて、これからも本校に心を寄せてくれると期待しています。まもなく創立130年にならんとする歴史と伝統ある白鷗高校の卒業生としての誇りを胸に、白き鷗のごとく美しく飛び立つ皆さんを見送り、白鷗はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。

卒業生の皆さんの健康と幸せを願い、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

平成二十九年三月七日
東京都立白鷗高等学校長 善本 久子 

平成28年度 入学式 学校長式辞

本日、東京都立白鴎高等学校及び東京都立白鴎高等学校附属中学校、平成28年度、入学式にあたり、ご多忙にもかかわらず多数のご来賓の方々、保護者の皆様のご臨席を賜りましたことを、まずはじめに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。

ただ今、中学校160名、高等学校235名の皆さんの入学を許可いたしました。
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本校の桜も皆さんを待って散り急がずにいてくれました。まず、高等学校から新たに白鴎の一員となった皆さん、白鴎へようこそ。附属中学校の新入生の皆さんは、大変厳しい入試を勝ち抜いて、今日ここにいることを皆さん自身うれしくまた誇らしく思っていることでしょう。合格を喜んだその時の気持ちを忘れず、新しい中学校生活をスタートさせてください。そして、中高一貫教育校の中でも併設型である本校は、高等学校から新たに入学する生徒の皆さんが、清新で活気あふれる新しい風を学校に吹き込んでくれることを願っています。附属中学校から進学した皆さんは、義務教育を終え、通う校舎は同じでも、一段階段を上るように、成長し新たな心持でいることと思います。今のフレッシュな気持ちを失うことなく、高入生と共にますます学業に行事に部活動等に励んでほしいと思います。

私たち教職員一同は、皆さんの入学を本当に心待ちにしていました。数多くの学校の中から本校を選んでくださったことをうれしく、またありがたく思い、その期待に応える責任の重さを痛感しています。私は、教師として、常に胸に刻んできた言葉があります。それは教育学者ウィリアム・アーサー・ワードの次のような言葉です。「凡庸な教師はただしゃべる。少しましな教師は理解させようと説明する。優れた教師は自らやって見せる。本当に優れた教師は心に火をつける」この「心に火をつける」英語ではinspireと言っていますが、私たちは、皆さんの「心に火をつける」存在になれるよう、たゆまぬ努力をしたいと思っています。

さて、中高を通して、新入生の皆さんに私がお願いしたいことが一つあります。それは「未知なるものを面白いと思う」ということです。自分が知らないこと、経験したことがないことに対して、人はどちらかというと、怖い、とか、嫌だ、という感情を抱きがちです。そしてこの世界で起きているさまざまの困難な課題の多くは、たとえば知らない外見、知らない宗教、知らない習慣や価値観、といった未知なるものに対する恐怖心や嫌悪感が要因ではないかと私は思っています。しかし、知らないことを知りたい、と思ったり、未知の世界に興味を惹かれたりすることこそ、学びの原点です。知らないからこそ面白いしもっと知りたい、こうした気持ちが、皆さんが学習を進めていく力になるはずです。ぜひ「知らないものを面白いと思う気持ちを自分の中で育ててください。

現在、新しい学びの形として「アクティブ・ラーニング」の重要性が言われています。アクティブ、というと何か「活動的」というイメージをもつ方もいらっしゃるかもしれませんが、アクティブとはパッシブ(受動的)の対義語としての「能動的」、受け身ではなく自ら主体的に学ぶという意味です。「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」がアクティブ・ラーニングであり、そのような学習に、白鴎では既にずっと以前から取り組んでいます。本校の教育理念である「開拓精神」とはまさにアクティブ・ラーニングによって培われるものです。

本校は、120年を超える伝統に支えられ、また都立中高一貫教育校のパイオニアとして、確かな学力をもって世界で活躍するリーダーを育成することを目指しています。まずはしっかりと学習習慣を身に付け、学校生活を実りあるものとしてほしいと思います。と同時に、豊かな心も育てて欲しいと願っています。

今日は、詩人の吉野弘が自分の子供にあてた詩の一部を紹介しましょう。

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。
自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき
他人があり
世界がある

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた

苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは。
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

この言葉は私たち大人の共通の願いだと思います。自分を愛する心があってこそ他者を愛し尊重することができるはずです。これは家族や友人など周囲の人々との関係性においてだけでなく、人種や国籍や宗教の違いを越えてグローバル化の時代を生きる皆さんが、異なる文化や異なる価値観を尊重し世界の人々と共に生きることにも通じているはずです。白鴎高等学校・附属中学校は、開校以来、そのような観点から日本の伝統・文化理解教育、国際理解教育を重視してきましたし、そのためのツールとしての英語教育の充実にも今後より一層力を入れていきますので、どうか皆さんは本校の教育活動を通じて、自分と自分以外の人々とを共に愛することのできる心をはぐくんでいってほしいと思います。

さて、保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。今日まで、深い愛情をもって慈しんでこられたお子様を大切にお預かりいたします。併設型中高一貫教育校である本校に対して、大きなご期待をいただくと同時にご心配やまたご不安をお持ちの方もいらっしゃることと拝察いたします。何かございましたら、どうぞ遠慮なく身近な教員にご相談ください。私たちはどのようなご相談やご意見にも真摯に耳を傾け、また課題を解決していく心構えでおります。

一方、お子様方自身も、それぞれ中学生や高校生になることで、自分が一段階段を上り成長したということを自覚していることと思います。保護者の皆様には、少しずつ手を離しつつ、なお目は離さず、の適度な距離を保って、見守っていただければありがたく存じます。特に規則的な生活を送り家庭学習の時間をきちんと持つという基本的生活習慣においては、ご家庭でのご指導に負うところが大変大きくなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。私どもは、保護者の皆様と手をたずさえながら、お子様の豊かな成長に寄り添い、大切な時を共有していきたいと考えています。

保護者の皆様、またご来賓の皆様には、今後とも本校の教育に、一層のご理解とご支援を賜りますよう改めてお願いを申し上げます。

本校に対する皆様方のご期待に応える教育を教職員一同推進して参りますことをここにお誓い申し上げて式辞といたします。

平成28年4月7日
東京都立白鴎高等学校・東京都立白鴎高等学校附属中学校長
善本久子