創立百三十周年記念式典 校長式辞

 本日は、東京都立白鷗高等学校及び附属中学校創立百三十周年記念式典にあたり、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜りましたことを、始めに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
 本校の百三十年にわたる歴史と伝統は、歴代の校長をはじめ生徒・教職員の真摯な努力と、「双鷗会」「鷗友会」「後援会」の皆様をはじめ、多くの方々のご支援の賜物であります。
 本校は明治21年(1888年)、初代文部大臣森有礼の認可を受け、東京初の府立高等女学校として開校しました。やがて校名を府立第一高等女学校と改め、20世紀の幕開けと共に、現在の地、浅草区七軒町に新校舎を建設、以来百十数年の時を経ています。日本の女子教育のリーダーであった本校は、昭和24年には男女共学化し、その名も白鷗高校となりました。
 そして、平成の世に本校に転機が訪れます。平成17年4月、東京初の公立中高一貫教育校として、附属中学校を併設し、新たな1ページが始まりました。他に例を見ない東西2つの離れた校舎の中、「辞書は友達、予習は命」を合言葉に、生徒達はひたむきに学び、行事や部活動に打ち込み、心豊かに成長しています。
 このように本校は常に時代をリードする開拓者であり続けました。この十年を振り返りますと、平成23年3月、中高一貫教育校として初めての卒業生が巣立ち、その進学実績は、世に「白鷗ショック」と喧伝され、都立中高一貫の底力と可能性を示したと受け止められました。この「白鷗ショック」後に最初に入学しこの春卒業した第8期生の進学実績は、中高一貫へ改編後最高となりました。
 部活動においても、百人一首部の全国優勝や和太鼓部・吹奏楽部・中学陸上部の全国大会出場等、素晴らしい成果を挙げています。特別枠入試で入学した生徒の中からは、既に9名のプロ棋士を輩出し、日本の伝統芸能を継承する若者も育っています。
 そのような本校に今、新たなミッションが与えられています。東京都教育委員会の指定により、今年度から、グローバル人材育成の取組がスタートしました。このミッションで育てたい生徒像とは次のようなものです。「自己のアイデンティティーの確立と多様性の尊重を基盤に、国際的な「競争」と「協働」の両方ができる人材」 この目標の下で、「課題探究型学習」「日本の伝統・文化理解教育」「ダイバーシティ教育」を3つの柱として、新たな学びを構築しています。またツールとしての英語力向上に先行して取り組んだ結果、英検準2級以上が中学3年で91%、中学2年で80%という成果も挙げています。
 さて、生徒の皆さん。本校の校歌には「いよよただしく」の言葉があります。皆さんは、能力や環境に恵まれ、また努力も惜しまない人々です。そして今世界で起きていることの一面は、恵まれて努力し成功した人々の説く正しさや理想に対するある種の反発やいらだちではないかと私は考えています。皆さんには、正義を貫き主張すべきことを堂々と主張しつつ、一方で正しさを追求することの難しい人々の痛みや苦悩や怒りに心を寄せ、なお正しい道を歩めるよう、共に手を携え人々を導くことのできる人であってほしいと願っています。
私は折に触れて「ダイバーシティ(多様性)を尊重せよ」と言ってきました。世界情勢を見ればその難しさを感じることが多くなっています。国際理解教育を謳う学校は数多くありますが、日本の伝統や文化への理解教育を柱として明記している学校はほとんどありません。自国を学ぶことは、決して自国の優位性を誇り他国を貶めるためにあるのではありません。ダイバーシティ尊重が単なる美辞麗句のお題目ではなく、真に皆さんの心に種となって蒔かれるにはどうしたら良いでしょうか?
それには、まず学んで自分の知らない世界を知ることです。そして自分の頭で考え、その考えを表現し、積極的に周囲を巻き込んで共に行動していくこと。知るだけでなく考えるだけでなく、これらを繰り返していく中で、共感(シンパシー)をもって多様な他者と共存できるようになるのではないでしょうか?どれほど技術が進歩してもAIがシンパシーをもつことは難しいはずです。
歴史は後から遡って継ぎ足すことができません。百三十周年の節目の日に、生徒の皆さんは、本校の長い歴史と伝統を築いてきた3万を超える先輩方の努力が、有形無形の財産となって皆さんを支えていることに思いをはせ、また新たな歴史を自らが作るとの気概をもってほしいと思います。「優れた教師は自らやって見せる。本当に優れた教師は心に火をつける」長年私が教師として心に刻んできたウィリアム・アーサー・ワードの言葉ですが、これからは、教師が一方向に生徒の心に火をつける、インスパイアするのではなく、生徒同士、あるいは生徒と教師が互いにインスパイアしあう時代だと思います。
白鷗のこれからの10年は、Society 5.0と言われる社会の劇的な変化の中で、果敢なチャレンジの期間になります。大学入試制度の40年ぶりの改革を目前に控え、浮足立つことなく、自ら学び考え協働的に課題解決できる生徒を育成し、「伝統からグローバルな未来へ」、学校を挙げて前進いたします。
最後に、本日ご列席の皆様には、今後とも本校への変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げ、また皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

平成30年11月22日
東京都立白鷗高等学校及び附属中学校長 善本 久子