平成30年度 附属中学校卒業証書授与式 校長式辞

 本日は、東京都立白鷗高等学校附属中学校第十二回卒業証書授与式にあたり、多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席をたまわりましたことを、始めに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
 十二期生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんが心も体も一段と成長して、胸を張ってここにいる姿を見る時、私も大変誇らしい気持ちになります。皆さんは、本校での3年間、高校に長く伝わる「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、熱心に学習に取り組み、確かな学力を身に付け、豊かな心をはぐくみ、多くの友達を得たことと思います。体育祭、白鷗祭、合唱コンクールの三大行事、部活動や委員会活動、一年の時のプレゼンテーション合宿や二年の農村体験などは、忘れることのできない思い出として皆さんの心に刻まれていることでしょう。私は3年前の入学式の皆さんの、まだあどけない表情や可愛らしい歌声を今もよく覚えています。この3年間皆さんと一緒に歩んできて、白鷗での時間の密度の濃さを感じます。
中高一貫校の中学3年生というのは過ごし方がなかなか難しい面があります。特に本校の皆さんは、東校舎から西校舎に移り、一足早く高校生の仲間入りの気分を味わいつつ、本来ならば最上級生として大いに自我を拡張できるところを、末っ子として何かと心細く窮屈なこともあったのではないかと思います。一般的には中だるみなどと言われる中で、皆さんは少しもそのような心配を感じさせない生き生きとした姿を見せてくれました。高校受験という通過儀礼の機会のない皆さんには、この後のアメリカ研修旅行や英検などへの挑戦が良いモチベーションになっていたようです。英検は3級が中学卒業程度、高校卒業までには準2級が求められると言われています。皆さんはさらにその上の2級以上に約60%が合格しています。これは本当に驚異的な成果です。合格した皆さんは誇りに思い、再度挑戦する皆さんは是非とも頑張ってほしいと思います。
中学校を卒業するということは、義務教育の修了という意味も持っています。小学校からの九年間の義務教育を終えるということは、皆さんにとって大変大きな人生の節目の時ということができます。義務教育は、日本の法律においては大人が子供に教育を受けさせる義務です。日本の中学校に相当する前期中等教育への就学率は、全世界で見るとおよそ67%です。皆さんの同世代の3分の1は学校に行っていません。このような言葉があります。「もし財布の中身を頭につぎこんだら、誰も盗むことはできない。 知識への投資がいつの世でも 最高の利子を生む。」学ぶことが皆さんを色々な意味で豊かにしてくれると思います。学びで獲得したものは誰も奪うことができないのです。皆さんには、知識の獲得には貪欲でありつつ、遠い地球の反対側にいる、学びが困難な人々やそのことによる貧困の連鎖にも思いを寄せることのできる人であってほしいと思います。義務教育を終えるにあたっては、皆さんをここまで育て、教育の環境を与えてくださった保護者の方々に、改めて感謝の気持ちをもってほしいと思います。
今までは、学ぶべきことや学び方は大人が示してくれました。これからは自分で学びたいことを発見し、自らが主体的に学びを獲得していってほしいと願っています。何のために学ぶのか、これは本質的な問いです。豊かさだけが学びの目的ではありません。人は生きる意味をわかってから生きるわけではなく、誰もが生きながら生きる意味を考えています。同じように学びながら学びの意味を見出そうとすることこそ大切だと私は思います。義務教育を終え、白鷗高校への進学を前にして、もう一度学ぶことの意味や面白さを感じて、来るべき高校での進化した学びに期待感をもち、より一層の学習のモチベーションの向上につなげてほしいと私は心から願っています。
 さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとりまして、九年間の義務教育の修了は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。お子様の3年間の成長は本当に目を見張るものがあります。あどけなかった彼らが思春期を迎え、時に対話が難しくハラハラする面もおありかと思います。今日は保護者の皆様にも義務完了の卒業式だと思います。
これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。保護者の会である「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。引き続き、白鷗高校におきましてもご支援をよろしくお願いいたします。また、ご来賓の皆様をはじめ、近隣の皆様には、本校の成長を温かく見守っていただき、多くのご声援をたまわりました。あらためて深く御礼を申し上げます。
 卒業式を終えたら、いよいよアメリカ西海岸、スタンフォード大学への研修旅行に出発です。白鷗として初めての試みです。皆さんも期待にワクワクドキドキだと思います。このような素晴らしい計画を実現させることができたのは、「グローバル人材育成の取り組みがスタートしたら、十二期生がそれをリードする存在になりたい」という担任団の先生方の熱い思いがあったからこそです。そして何よりも、この旅行に要する多額の費用をご負担くださった保護者の皆様のおかげです。そのことに肝に銘じて、1分1秒たりとも無駄にすることなく有意義な旅となるよう、しっかり心構えをし、体調を整えてください。現地でのプレゼンテーションも準備万端と旅行委員の皆さんから聞きました。私も大変楽しみにしています。
皆さんの中には本校を卒業し、自分の望む進路を切り拓くために白鷗を離れ新天地へと羽ばたく人もいます。生徒としてはお別れですが、白鷗はいつまでも皆さんの母校です。新しい場所での実り多い日々を心から祈っています。どうか頑張ってください。
卒業生の皆さんの輝ける未来とそのためのたゆまぬ努力を期待し、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

平成31年3月16日
東京都立白鷗高等学校附属中学校長 善本 久子                            

平成30年度 高等学校卒業証書授与式 校長式辞

 本日は、東京都立白鷗高等学校第71回卒業証書授与式にあたり、多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席をたまわりましたことを、はじめに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
 9期生の皆さん、卒業おめでとうございます。222名の皆さんの誇りに満ちた姿を見るとき、本当に感慨深いものがあります。
 皆さんは縁あってこの白鷗で学び、長く受け継がれてきた「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、たゆまぬ努力で確かな学びを獲得し、悩みや葛藤の中にも生涯忘れえぬ思い出やかけがえのない友を得たことと思います。そしてそれぞれが自分の進路を切り拓き、今日新しい道へ踏み出します。
 この三年間を振り返り、クラスTシャツを身にまとって戦った最後の体育祭、大きな改革を成し遂げた白鷗祭、皆で心を一つに歌った合唱コンクール、飯盒炊爨でのカレー作りに汗をかいたホームルーム合宿、台風の直撃を受けた台湾修学旅行、共に戦い時に涙した部活動など、多くの思い出が皆さんの心に刻まれていると思います。今年は本校の創立百三十周年の節目の年でもありました。白鷗での生活で培われたものが皆さんの中で核となって、今後の皆さんを支えてくれるものと期待しています。
 さて、皆さんは20世紀最後の年である2000年、ミレニアムの年に、そして21世紀最初の2001年に生まれた人々です。皆さんが生まれた記念すべきミレニアムの年に、ある新聞社がこの1000年の間に現れた日本の文学者の人気投票を行いました。結果は1位が夏目漱石、2位は紫式部。この二人が飛び抜けて得票が多かったようです。2000年に生まれた皆さんは22世紀まで3世紀生きることができる、と私は始業式で言いました。人生百年時代と言われる中で、これから世界に羽ばたく皆さんが、どのように生きるべきか、この偉大な先人である夏目漱石の言葉の中に、私が今日皆さんに伝えたいヒントがあります。
 夏目漱石の講演の記録である「私の個人主義」という作品、皆さんの中に読んだことがある人もいるでしょう。この中で、漱石が英文学の道を志しながら、文学とは何か、自分の進むべきはどこなのかわからずに苦しみ葛藤し、「自己本位」という言葉を得て、大変強くなったと言います。他人の真似ではなく、「文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるよりほかに、私を救う途はないのだと悟った」そして若い人々にこう語りかけます。「どうしても、一つ自分の鶴嘴で掘り当てるところまで進んで行かなくってはいけないでしょう。」「何かに打ち当るまで行くという事は、学問をする人、教育を受ける人が、生涯の仕事としても、あるいは十年二十年の仕事としても、必要じゃないでしょうか。ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは初めて心を安んずる事ができるのでしょう。」
同時に漱石はこの講演の中で、次のようにも語っています。「いやしくも公平の眼を具し正義の観念をもつ以上は、自分の幸福のために自分の個性を発展して行くと同時に、その自由を他にも与えなければすまん事だと私は信じて疑わないのです。」そして留学先のイギリスについて、イギリスが嫌いだと言いつつこう話します。「あれほど自由でそうしてあれほど秩序の行き届いた国は恐らく世界中にないでしょう。彼らはただ自由なのではありません。自分の自由を愛するとともに他の自由を尊敬するように、子供の時分から社会的教育をちゃんと受けているのです。だから彼らの自由の背後にはきっと義務という観念が伴っています。」
 漱石の言葉は、これまで折にふれて私が皆さんに話してきた自己のアイデンティティーの確立とダイバーシティ(多様性)の尊重ということに通じると思います。自分は何者なのかというアイデンティティーを自分の力で掘り当て、異なる価値観を認め、ダイバーシティを互いに尊重し合えるよう、自分だけでなく周囲の人々をも巻き込み、理想とする社会の実現に努めるリーダーに成長してほしいと私は心から願っています。
 さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとりまして、今日の佳き日は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。これまで生徒の皆さんと過ごしてきて、その明るくひたむきな姿に私の方が救われる思いを抱くことがたくさんありました。これも保護者の皆様の慈しみのたまものと感服いたします。これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。保護者の会である「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。引き続き、「後援会」としてご支援をいただければありがたく存じます。また、ご来賓の皆様をはじめ、近隣の皆様には、本校の成長を温かく見守っていただき、多くのご声援をたまわりました。あらためて深く御礼を申し上げます。
 センター試験の前日、9期生の皆さんの健闘を祈って片目を描き入れた白い高崎ダルマに、今朝早く、大願成就を祝い両目を入れました。試験の結果がどうあれ、努力した皆さんは全員が学びにおいて勝者です。勉強の努力は決して皆さんを裏切ることはありません。真摯な努力によって身に付いた学びは、必ず皆さんのこれからの人生で助けとなってくれるはずです。白鷗の良き伝統であるひたむきな学びをどうかこれからも続けていってください。
 今皆さんは、卒業して新天地へはばたく喜びと共に、別れの寂しさを感じてもいることでしょう。生徒としてはお別れですが、同窓会である「鷗友会」を通じて、これからも本校に心を寄せてくれると期待しています。創立百三十年の節目の年に、そして平成最後の年に、歴史と伝統ある白鷗高校の卒業生としての誇りを胸に、白き鷗のごとく美しく飛び立つ皆さんを見送り、白鷗はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。どうか皆さんのこれからの人生が幸せに満ちたものでありますように。
卒業生の皆さんの健康と幸せを願い、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

平成31年3月9日
東京都立白鷗高等学校長 善本 久子 

Macmillan Readers POPコンテストで優秀賞受賞

読書推進活動の一環として応募したMacmillan Readers POPコンテストにおいて、本校生徒のPOP作品が優秀賞を受賞しました。
受賞作はカラフルなイラストの人物たちが本のおすすめポイントを勢いよく英語で話している様子が印象的な作品でした。
今回本校からは11作品応募しましたが、どの作品も工夫を凝らした力作ぞろいでした。
今後も多くの生徒が読書を楽しみながら、英語力向上に励んでいくことを期待しています。