令和2年度 白鷗高校入学生の方々へ

先日お配りいたしました入学者に対する資料に掲載予定の令和2年度入学生(高校)教育課程表は以下のリンクにございます。入学後のオリエンテーションで教育課程表の説明をした後、ご質問にお答えする予定です。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

・令和2年度入学生(高校)教育課程表

令和2年度 附属中学校卒業証書授与式 校長式辞

はじめに、本日の卒業式は、私達がこれまで経験してきたものとは全く異なっていることを皆さんにお詫びします。日頃から白鷗を応援してくださる来賓の方々もいらっしゃいません。皆さんを慈しんでここまで育ててくださった保護者の皆様も列席することができません。皆さんを先輩と仰ぐ下級生の大半の姿もありません。世界は今、未知の大きな困難に直面しています。今日の卒業式が、後に、この困難を力を合わせて克服した時期の忘れられない記憶として、懐かしく温かく思い出されることを願いつつ、式辞を述べたいと思います。

十三期生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんが心も体も一段と成長して、ここにいる姿を見る時、私も大変誇らしい気持ちになります。皆さんは、本校での3年間、熱心に学習に取り組み、豊かな心をはぐくみ、多くの友達を得たことと思います。特に十三期生は、体育祭、白鷗祭、合唱コンクールの三大行事等に素晴らしい団結力を見せてくれました。部活動や委員会活動、一年の時のプレゼンテーション合宿や二年の農村体験などは、良き思い出として皆さんの心に刻まれていることでしょう。

中高一貫校の中学3年生というのは過ごし方がなかなか難しい面があります。特に本校の皆さんは、東校舎から西校舎に移り、一足早く高校生の仲間入りの気分を味わいつつ、何かと心細く窮屈なこともあったのではないかと思います。一般的には中だるみなどと言われる中で、皆さんは少しもそのような心配を感じさせない生き生きとした姿を見せてくれました。高校受験という通過儀礼の機会のない皆さんに、目標をもってもらいたいと準備をしてきたアメリカ研修旅行が中止になったことを、私は本当に申し訳なく思っています。皆さんがどれほど楽しみにし、またどれほど努力して準備してきたかを知っています。多額の費用負担を理解してくださった保護者の皆様にもお詫びをしなければなりません。私は皆さんが旅行の準備で培ったものを別の形で生かす方法はないか、考えていきたいと思っています。

中学校を卒業するということは、義務教育の修了という意味も持っています。日本の中学校に相当する学校への就学率は、全世界で見るとおよそ67%です。皆さんの同世代の3分の1は学校に行っていません。学ぶことが皆さんを色々な意味で豊かにしてくれると思います。皆さんには、知識の獲得には貪欲でありつつ、広い地球のどこかにいる、学びが困難な人々やそのことによる貧困の連鎖にも思いを寄せることのできる人であってほしいと期待しています。また義務教育を終えるにあたっては、義務を遂行し、教育の環境を与えてくださった保護者の方々に、改めて感謝をしてください。

さて、今日は晴れがましいお祝いの日ではありますが、やはり今回の新型コロナウィルス問題に触れないわけにはいきません。連日のニュースを見ていて、不安になっている人もいるでしょう。当初の予想を超えて、世界に影響が広がっています。この危機をどのように乗り越えるか、今私達が試されているように思います。人は危機に直面すると、それまで隠れていた本質がむき出しになると言います。

科学の力で、あるいは医療の現場で、この問題の解決のために日夜大変な努力をしている人々が大勢います。一方で未知のものへの不安は、利己主義や差別や憎悪を新たに生み出してもいます。このようなときに皆さん一人一人は今どんなことを考えていますか?これをきっかけに、ウィルスに関心をもって勉強をしてみようと思った人もいるかもしれません。長い臨時休業期間に、ストレスをためずに生活する工夫をしている人もいるでしょう。皆さんには、むやみに不安になるのではなく、また根拠のない自信で軽く見るのでもなく、あふれる情報を冷静に賢く見極めながら、心と体の健康を保ち、自分の役割を明るくポジティブに果たしていってほしいと願っています。

心の中の「自分くらいはいいだろう」とか「憎しみ」や「差別」は、誰の心の中にもある猛獣のようなものです。中学校での3年間を通じて、私たちは一面では、皆さんに、心の猛獣使いになることを教えてきたと思っています。白鷗の校風とも言える、真面目にコツコツ、ひたむきな学びも、そうやって受け継がれてきたものです。「悲観的な予言は当たらない」の言葉を私は信じています。この機会に、一人一人が前向きな気持ちで次の学びへのモチベーションを高めていくよう期待しています。

皆さんの中には本校を卒業し、自分の望む進路を切り拓くために白鷗を離れ新天地へと羽ばたく人もいます。生徒としてはお別れですが、白鷗はいつまでも皆さんの母校です。新しい場所での実り多い日々を心から祈っています。どうか頑張ってください。

保護者の皆様には、今日直接感謝の言葉を述べることができません。本校の教育に惜しみなくご理解とご協力をいただいたこと、私が心からお礼を述べていた、と皆さんから伝えていただければ嬉しいです。卒業生の皆さんの輝ける未来とそのためのたゆまぬ努力を期待し、また本校を支え温かく見守ってくださるすべての皆様に心から感謝を申し上げ、私の式辞といたします。

令和2年3月14日
東京都立白鷗高等学校附属中学校長 善本 久子

令和2年度 高等学校卒業証書授与式 校長式辞

十期生の皆さん、卒業おめでとうございます。今日の卒業式は、私達がこれまで経験してきたものとは全く異なっています。日頃から白鷗を応援してくださる来賓の方々もいらっしゃいません。皆さんを慈しんでここまで育ててくださった保護者の皆様も列席することができません。皆さんを慕う下級生の姿もありません。世界は今、未知の大きな困難に直面していますが、今日の卒業式が、後に、その困難を克服したプロセスの中の忘れがたい日として記憶されることを願いつつ、式辞を述べたいと思います。

皆さんは縁あってこの白鷗で学び、長く受け継がれてきた「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、たゆまぬ努力で確かな学びを獲得し、悩みや葛藤の中にも生涯忘れえぬ思い出やかけがえのない友を得たことと思います。そしてそれぞれが自分の進路を切り拓き、今日新しい道へ踏み出します。

十期生は、高入生と中入生が入学当初から同じホームルームで過ごした最初の学年です。高入生は新しい風を吹き込み、中入生は温かく迎え入れる。まさに多様性の尊重を象徴するような改革でしたが、これは皆さんのまっすぐな心と、担任団をはじめとする先生方の信念に基づく努力があったからこそ成功したのだと私は考えています。

皆さんは、本校がグローバル人材の育成のミッションを掲げ、英語力の向上に取り組み、素晴らしい成果を挙げた最初の学年でもあります。当初の目標をはるかに上回る驚くべき飛躍は、不思議なことに、次々に下の学年に引き継がれていきました。皆さんが先達となったことで、後輩たちはそれを当たり前のこととして力を伸ばすことができたのです。これはやがて白鷗の伝統となり、本校を巣立つ生徒たちの誇りと自信につながっていくことでしょう。

「白鷗ともだちプロジェクト」も十期生の代に本格的に活動し、海外の様々な国の同世代との交流を活発にしてくれました。

皆さんは元号が令和になって最初の卒業生でもあります。「令和」という元号が最初に発表された時、海外のメディアは令和の「令」を命令の意味を表す言葉だと報じました。実際には「令」という文字は、日本の古典において「美しい」や「良い」という意味を持っています。なぜこのような誤解が生じたのかといえば、元号の発表の際に、政府は同時に公式に英語での解説を発表しなかったからなのです。

日本は島国という地形の特色もあり、どちらかというと内向きで、自分たちの立場を声高に主張しない傾向があります。しかしこれからの時代は、自らの考えを堂々と世界共通言語と言える英語で言葉にし、議論を交わすことが必要になります。言葉にしなければ理解を得ることは難しいからです。皆さんはそれができる人々になってほしいと心から願っています。そのためには、白鷗で培った英語力が必ず役に立ってくれるはずです。

謙虚さは日本の美徳でもあり、大切にするべきですが、それが相互理解を阻むものであっては残念です。私が繰り返しダイバーシティ(多様性)を尊重してほしいと皆さんに言ってきたのは、他者を知り、他者の異なる考えを尊重しながら、自らも発信し他者からの理解を得てほしいという思いからです。

人間は未知のものに対して恐怖心や嫌悪感を抱くものであると、これまでもお話ししてきました。今私たちはまさにその状況にあります。未知の新型コロナウィルスに対して、献身的に闘いに挑んでいる人々もいれば、そこにつけこむように、マスクの転売やデマに惑わされての買い占めに走る人々もいます。若い皆さんはこれをどのように見ているでしょうか? 危機においては、それまで見えなかった人間の本質が顕在化します。今の状況をしっかりと心の目で見すえ、皆さんの手で社会をよりよく変えてくれることを期待しています。「悲観的な予言は当たらない」という言葉を私は信じています。

センター試験の前日、10期生の皆さんの健闘を祈って片目を描き入れたダルマに、今朝、大願成就を祝い、両目を描き入れました。試験の結果がどうあれ、努力した皆さんは全員が学びにおいて勝者です。勉強の努力は決して皆さんを裏切ることはありません。真摯な努力によって身に付いた学びは、必ず皆さんのこれからの人生で助けとなってくれるはずです。

今皆さんは、卒業して新天地へはばたく喜びと共に、別れの寂しさを感じてもいることでしょう。生徒としてはお別れですが、同窓会である「鷗友会」を通じて、これからも本校に心を寄せてくれると期待しています。歴史と伝統ある白鷗高校の卒業生としての誇りを胸に、白き鷗のごとく美しく飛び立つ皆さんを見送り、白鷗はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。

保護者の皆様には、今日直接感謝の言葉を述べることができません。本校の教育に惜しみなくご理解とご協力をいただいたこと、私が心からお礼を述べていた、と皆さんから伝えていただければ嬉しいです。

どうか皆さん幸せに。卒業生の皆さんの健康と幸福を心から願い、本校を支え温かく見守ってくださるすべての皆様に心から感謝を申し上げ、私の式辞といたします。

令和2年3月7日
東京都立白鷗高等学校長 善本 久子