令和2年度 高等学校卒業証書授与式 校長式辞

十期生の皆さん、卒業おめでとうございます。今日の卒業式は、私達がこれまで経験してきたものとは全く異なっています。日頃から白鷗を応援してくださる来賓の方々もいらっしゃいません。皆さんを慈しんでここまで育ててくださった保護者の皆様も列席することができません。皆さんを慕う下級生の姿もありません。世界は今、未知の大きな困難に直面していますが、今日の卒業式が、後に、その困難を克服したプロセスの中の忘れがたい日として記憶されることを願いつつ、式辞を述べたいと思います。

皆さんは縁あってこの白鷗で学び、長く受け継がれてきた「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、たゆまぬ努力で確かな学びを獲得し、悩みや葛藤の中にも生涯忘れえぬ思い出やかけがえのない友を得たことと思います。そしてそれぞれが自分の進路を切り拓き、今日新しい道へ踏み出します。

十期生は、高入生と中入生が入学当初から同じホームルームで過ごした最初の学年です。高入生は新しい風を吹き込み、中入生は温かく迎え入れる。まさに多様性の尊重を象徴するような改革でしたが、これは皆さんのまっすぐな心と、担任団をはじめとする先生方の信念に基づく努力があったからこそ成功したのだと私は考えています。

皆さんは、本校がグローバル人材の育成のミッションを掲げ、英語力の向上に取り組み、素晴らしい成果を挙げた最初の学年でもあります。当初の目標をはるかに上回る驚くべき飛躍は、不思議なことに、次々に下の学年に引き継がれていきました。皆さんが先達となったことで、後輩たちはそれを当たり前のこととして力を伸ばすことができたのです。これはやがて白鷗の伝統となり、本校を巣立つ生徒たちの誇りと自信につながっていくことでしょう。

「白鷗ともだちプロジェクト」も十期生の代に本格的に活動し、海外の様々な国の同世代との交流を活発にしてくれました。

皆さんは元号が令和になって最初の卒業生でもあります。「令和」という元号が最初に発表された時、海外のメディアは令和の「令」を命令の意味を表す言葉だと報じました。実際には「令」という文字は、日本の古典において「美しい」や「良い」という意味を持っています。なぜこのような誤解が生じたのかといえば、元号の発表の際に、政府は同時に公式に英語での解説を発表しなかったからなのです。

日本は島国という地形の特色もあり、どちらかというと内向きで、自分たちの立場を声高に主張しない傾向があります。しかしこれからの時代は、自らの考えを堂々と世界共通言語と言える英語で言葉にし、議論を交わすことが必要になります。言葉にしなければ理解を得ることは難しいからです。皆さんはそれができる人々になってほしいと心から願っています。そのためには、白鷗で培った英語力が必ず役に立ってくれるはずです。

謙虚さは日本の美徳でもあり、大切にするべきですが、それが相互理解を阻むものであっては残念です。私が繰り返しダイバーシティ(多様性)を尊重してほしいと皆さんに言ってきたのは、他者を知り、他者の異なる考えを尊重しながら、自らも発信し他者からの理解を得てほしいという思いからです。

人間は未知のものに対して恐怖心や嫌悪感を抱くものであると、これまでもお話ししてきました。今私たちはまさにその状況にあります。未知の新型コロナウィルスに対して、献身的に闘いに挑んでいる人々もいれば、そこにつけこむように、マスクの転売やデマに惑わされての買い占めに走る人々もいます。若い皆さんはこれをどのように見ているでしょうか? 危機においては、それまで見えなかった人間の本質が顕在化します。今の状況をしっかりと心の目で見すえ、皆さんの手で社会をよりよく変えてくれることを期待しています。「悲観的な予言は当たらない」という言葉を私は信じています。

センター試験の前日、10期生の皆さんの健闘を祈って片目を描き入れたダルマに、今朝、大願成就を祝い、両目を描き入れました。試験の結果がどうあれ、努力した皆さんは全員が学びにおいて勝者です。勉強の努力は決して皆さんを裏切ることはありません。真摯な努力によって身に付いた学びは、必ず皆さんのこれからの人生で助けとなってくれるはずです。

今皆さんは、卒業して新天地へはばたく喜びと共に、別れの寂しさを感じてもいることでしょう。生徒としてはお別れですが、同窓会である「鷗友会」を通じて、これからも本校に心を寄せてくれると期待しています。歴史と伝統ある白鷗高校の卒業生としての誇りを胸に、白き鷗のごとく美しく飛び立つ皆さんを見送り、白鷗はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。

保護者の皆様には、今日直接感謝の言葉を述べることができません。本校の教育に惜しみなくご理解とご協力をいただいたこと、私が心からお礼を述べていた、と皆さんから伝えていただければ嬉しいです。

どうか皆さん幸せに。卒業生の皆さんの健康と幸福を心から願い、本校を支え温かく見守ってくださるすべての皆様に心から感謝を申し上げ、私の式辞といたします。

令和2年3月7日
東京都立白鷗高等学校長 善本 久子