令和2年度 附属中学校卒業証書授与式 校長式辞

 本日は、東京都立白鷗高等学校附属中学校第14回卒業証書授与式にあたり、感染症予防の観点から、様々な対策を取っており、例年と異なりますことをご了解ください。お招きできなかった来賓の皆様も離れた所から祝ってくださっていることと思います。
 十四期生の皆さん、卒業おめでとうございます。3年前の入学式を思い、皆さんが心も体も一段と成長して、ここにいる姿を見る時、私も大変誇らしい気持ちになります。今日は、本当によく頑張りましたね、とまず褒めてあげたいです。突然の臨時休業から西校舎への引越し。オンライン授業。感染防止のための新しい生活様式。十二月以降の感染者の急増と再びの緊急事態宣言で、都立の学校からも多くの感染者が出る中、本校では感染者を出すこともなく、ご家庭も含めて大変な努力があったことと思います。給食の時間に時折3年生の教室を覗くと、いつも驚くほどシーンとしてまさに「黙食」している姿に、感心すると同時に、申し訳ない気持ちになりました。食べることは体の栄養のためだけにあるのではありません。人は言葉で語り合い、触れ合いながら、共同体を構成して生活する稀有な生き物です。その根源的な営みが今危機にさらされています。若い皆さんの努力に比べて、私達大人は本当に皆さんを導くお手本となることができたのか。緊急事態宣言が再延長され、大人はさらなる感染防止策として何ができているのか、そう問われても私は答えることができません。アメリカは無理でもせめて長崎には行かせてあげたかった。悔しい思いです。それでもこの1年間で、皆さんの成長はめざましく、困難な時期だからこそ新しくできるようになったことも数多くあると思います。
 中学校を卒業するということは、義務教育の修了という意味も持っています。日本の法令では、義務教育は大人の義務です。義務を遂行し、教育の環境を与えてくださった保護者の方々に、改めて感謝を言葉で表してほしいと思います。一方で世界の皆さんと同世代の3分の1は学校に行っていません。そしてそれは女子の方が多いのです。なぜそうなっているのか、日本は高校までは世界一男女等しく教育が受けられる国ですが、想像を巡らせてみてください。十四期生はグローバル一期生と言われてきました。世界の様々な国や地域を経験し多様な背景をもつ皆さんがいて、時にはぶつかったり悩んだりしながら、ダイバーシティの言葉と共に3年間を過ごしたと思います。最も身近な多様性である男女が互いに尊重し、区別なく自分の道を開拓できるよう、皆さんが成長してくれることを願ってやみません。
 多様性の尊重という言葉はとても美しく誰も表立って反対はしません。けれど、それを実行するのは実は難しいものです。今のような危機になると、むき出しの利己主義や憎悪や差別が必ず表に現れます。この一年で、私が最も心を動かされた言葉の一つが、アメリカの十八歳のシンガーソングライター、ビリー・アイリッシュさんの言葉です。黒人差別と闘うBLM運動に反対する人々の「すべての命が大切だ」という声に、白人である彼女はこう反論します。「もし友達が腕を怪我したら、”すべての腕が大切”だからって誰かがその友達にバンドエイドをあげるのを待ってるの? 違うよね。友達を助けるよね。だってその友達は痛がっているし、助けが必要だから。血を流しているんだから。もし誰かの家が燃えていて、家の中に人がいるって言われても、あなたは消防士に先に他の家に行って、って言うの? ”すべての家が大切だから”って。違うよね! だってその人たちには必要ではないから。」すべての命が大切、という一見正しく聞こえる言葉にひそむ問題点を若い彼女が鮮やかに指摘しています。多様性の尊重は、理念ではなく、日常の行動の中での具体的な共感から想像せよと私たちに教えてくれています。
 さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとって、九年間の義務教育の修了は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。お子様の3年間の成長は本当に目を見張るものがあります。あどけなかった彼らが思春期を迎え、時に対話が難しくハラハラする面もおありかと思います。今日は保護者の皆様にも義務完了の卒業式だと思います。
  これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。保護者の会である「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。引き続き、白鷗高校におきましてもご支援をよろしくお願いいたします。
皆さんの中には本校を卒業し、自分の望む進路を切り拓くために白鷗を離れ新天地へと羽ばたく人もいます。生徒としてはお別れですが、白鷗はいつまでも皆さんの母校です。新しい場所での実り多い日々を心から祈っています。どうか頑張ってください。
  卒業生の皆さんの輝ける未来とそのためのたゆまぬ努力を期待し、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。




令和三年三月十三日
             東京都立白鷗高等学校附属中学校長 善本 久子