令和2年度 高等学校卒業証書授与式 校長式辞

 本日は、東京都立白鷗高等学校第73回卒業証書授与式にあたり、感染症予防の観点から、様々な対策を取っておりますことをご了解ください。お招きできなかった来賓の皆様も離れた所から祝ってくださっていることと思います。
 11期生の皆さん、卒業おめでとうございます。229名の皆さんの誇らしい姿を見るとき、この1年の苦難を振り返りながら胸に熱く迫るものがあります。
 今日の卒業式で何を話すべきか、私は大変悩みました。お祝いの日ですから、できる限り希望に満ちた言葉を皆さんに贈りたい。けれどもこの1年間、私達大人が皆さんに見せてきた姿は、果たして本当に皆さんが未来への希望を抱くことができるものであったかと自分に問うています。未曽有の危機の中、科学的知見に基づかない判断や行動、陰謀論や差別や憎悪。そして40年ぶりの大学入試改革の最初の年にあたり、その改革の理念を実現するための方策が次々と撤回され、皆さんは度重なる制度の変更に翻弄されました。責任ある大人の一人として、若い皆さんに申し訳ないという思いでいっぱいです。学校としても皆さんにもっとできたことがあったのではないか。この危機に正しい判断や対応ができていたか。今も私の答えは出ません。
 そんな中、11期生の皆さんは、私たちが驚くほどに、明るくポジティブに、ひたむきに、自分の新たな進路に向けて、開拓精神をもって粘り強く努力を続けてくれました。皆さんは白鷗生として初めて、高校2年から自ら課題を設定して個人探究論文に取り組み、高校3年生で受験勉強と並行しながら、一人も欠けることなく全員が英語による論文を完成させました。その探究には一つとして同じものはなく、指導にあたったJETやALTの先生方も出来栄えを高く評価しています。全員が英語論文を書き上げる、こんなことは日本全国のどの高校でもおそらくできていないことだろうと思います。この成果はこの先の皆さんの学びの大いなる自信につながり、そして後に続く後輩たちの道しるべになると確信しています。
 また皆さんは白鷗生として初めてシンガポールへの修学旅行も実現させました。今アジアで最も勢いのある都市国家シンガポールで、国立シンガポール大学を訪問し学生と議論したり、現地に進出する日本企業と交流したり、そして最終日はガイドなしに自分たちだけで自由行動の後に、夜の空港に集合。わずか1年5か月前のことです。あの時、今の鎖国のような状態を誰が予想したでしょうか?
 今は物理的には鎖国状態ではありますが、是非皆さんの心は開いたままでいてください。白鷗はこれまでもそしてこれからも日本の伝統や文化に関する教育や多様性を尊重する教育を大切にします。他者に寛容であることができる人はまず自分に誇りをもっている人だからです。これまで繰り返し述べてきましたが、やはり「ダイバーシティ」です。未曽有の危機によってダイバーシティの尊重が困難にさらされています。どうか若い皆さんのエネルギーで、未来の社会を多様性あふれるものに形作っていってください。厳しい未来予想が多い中ですが、「悲観的な予言は当たらない」という言葉を、皆さんの力を私は今も信じています。
 保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長に寄り添ってこられた皆様に、今日の佳き日は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。
 大学入学共通テストの前日、オンライン壮行会で片目を描いたダルマに、今朝、大願成就を祝い両目を入れました。試験の結果がどうあれ、努力した皆さんは全員が学びにおいて勝者です。勉強の努力は決して皆さんを裏切ることはありません。5年前、この学校に赴任した私を最初に驚かせたのは、「辞書は友達、予習は命」の言葉そのままに、廊下で健康診断の順番を待つ間も時間を惜しんで勉強し読書する11期生の姿でした。白鷗の良き伝統であるひたむきな学びをどうかこれからも続けていってください。
 最後に一つ皆さんにお願いがあります。今年高校に入学した後輩の十三期生は、入学式も流鏑馬も体育祭も鳥越の神輿も白鷗祭も合唱コンクールも皆さんが経験したことを何一つできませんでした。十二期生も海外はおろか国内修学旅行も厳しい状況で、部活動は今も全くできていません。こうした活動で皆さんは大きく成長したはずです。その経験をこれからも色々な形で後輩たちに伝えていってほしいのです。そして今の危機をいつか後に振り返り、困難な時を人類の叡智を結集して乗り越えた記憶として懐かしく思い返すことができることを願ってやみません。
 今日、歴史と伝統ある白鷗高校の卒業生としての誇りを胸に、白き鷗のごとく飛び立つ皆さんを見送り、白鷗はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。どうか皆さんのこれからの人生が幸せに満ちたものでありますように。
卒業生の皆さんの健康と幸せを願い、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

令和三年三月六日
                  東京都立白鷗高等学校長 善本 久子