平成28年度 高等学校卒業証書授与式 校長式辞

本日は、東京都立白鷗高等学校第六十九回卒業証書授与式にあたり、多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席をたまわりましたことを、はじめに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。

卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。今226名の皆さんの誇りに満ちた姿を見るとき、本当に感慨深いものがあります。

皆さんは縁あってこの白鷗で学び、「辞書は友達、予習は命」の合言葉のもと、たゆまぬ努力で確かな学力を身に付け、悩みや葛藤の中にも生涯忘れえぬ思い出やかけがえのない友を得たことと思います。そしてそれぞれが自分の進路を切り拓き、今日新しい道へ踏み出します。皆さんは、都立の中高一貫教育校という新しい枠組の学校である本校を選んで入学してくれました。とりわけ、高校から入学した皆さんは、既に学校生活に慣れている生徒の中に、新しい風を吹き込んで開かれた集団にしてくれたと思います。

思い起こせば、皆さんが白鷗中学校に入学したのは、今から6年前、東日本大震災直後の社会の不安と混乱のさなかでした。入学式の実施さえ危ぶまれる中で、皆さんを無事に迎え入れることができて、教職員一同はどれほど嬉しかったことかと思います。若くエネルギーにあふれ、未来のある皆さんの存在こそが私たち大人の「希望」でした。そして、その2年半後には震災の復興を象徴するオリンピック・パラリンピックが東京で開催されることが決まり、現在は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて本校でもさまざまな取組が行われています。皆さんの白鷗での年月は、この国が未曾有の災害を乗り越え、復興へと一歩一歩進む時間と重なっています。

今年度、最上級生となった皆さんと面接をする中で、自らの夢をこんなふうに語ってくれた人がいます。「東日本大震災を経験して、代替エネルギーの研究にたずさわりたいと思うようになった。」「病気のおばあちゃんをずっと見てきたので、医療関係の仕事に就いて、病気を治す手助けがしたい。」このような夢をもつ皆さんを私は本当に誇りに思います。いつの日にか、皆さんが中学・高校時代を振り返り、「日本が歴史上でも経験したことのなかったような大きな災害を経て中学・高校と学んだけれど、あれからこの国は懸命に努力して、復興してきた。生きていくために本当に大切なものを見つめて、人に優しい温かい社会を作ってきた。」と言える日が来ることを私は願っています。震災から6年が過ぎ、東京で暮らしていれば、その爪あとを意識する機会は少なくなったようにも見えますが、一方で東北地方では、まだ人々が困難な状況からの復興に向けて闘っています。私たちは常にそのことを心に留めておかねばならないと思っています。

皆さんは、能力やあるいは環境・機会というものに恵まれた人々だと言えると思います。そして皆さんには、その環境や機会を生かし、能力を最大限に伸ばして、幸せな人生を送ってほしいと私は心から願っています。同時にその幸福を追求する中にも、自らが正しいと信じる道を人々と協働しながら歩むことができる人であってほしいと思います。このことは言うは易く行うは難し、です。今世界中で起きていることの一面は、能力や環境に恵まれて成功した人々の説く正しさや理想に対するある種の反発、と言えるのかもしれません。「そんなことより自分が大事だ、理想を言っては生きていけない。」と。皆さんには、困難な状況にあって正しさを追求することの難しい人々の痛みや苦悩に心を寄せながら、それでもなお理想に近づけるよう、正しい道を歩めるよう、共に手を携え人々を導くことのできる人であってほしいのです。白鷗が目指してきた、「世界で活躍することのできるリーダー」とはそのような意味だと私は思っています。

東日本大震災直後にカリフォルニア各地の高校を訪問した私の友人は、どの学校にも必ず目立つ場所に日本への募金を呼びかける箱が置かれているのに非常に驚いたといいます。果たして私たちは、この6年間そのように見知らぬ人々を想像して寄り添うことができたか、と反省させられます。

どんな時代であっても、自分たちさえ良ければよい、という考え方が望ましいはずはありません。世界には、違いを認めようとしない排他的な空気や憎悪が広がっているようにも見えます。しかし多様であることを認める社会というのは、私たちが生きやすい社会だと私は思っています。皆さんは、自分は何者なのかというアイデンティティをしっかりもちながら、異なる価値観を認め、人種、国籍、性別、宗教、といったダイバーシティ(多様性)を互いに尊重し合えるよう、自分だけでなく周囲の人々をも巻き込み、理想とする社会の実現に努めるリーダーに成長することを願ってやみません。

さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとりまして、今日の佳き日は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。これまで生徒の皆さんと過ごしてきて、その真面目でひたむきな姿に私の方が救われることがたくさんありました。これも保護者の皆様の慈しみのたまものと感服いたします。これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。保護者の会である「双鷗会」の皆様には、中高一貫教育校としての学校づくりを支えていただき、感謝の念に堪えません。引き続き、「後援会」としてご支援をいただければありがたく存じます。また、ご来賓の皆様をはじめ、近隣の皆様には、本校の成長を温かく見守っていただき、多くのご声援をたまわりました。あらためて深く御礼を申し上げます。

センター試験の前日、皆さんの健闘を祈って片目を描き入れたダルマに、今朝早く、大願成就を祝い、両目を入れました。試験の結果がどうあれ、皆さんは全員が勝者です。勉強の努力は決して皆さんを裏切ることはありません。真摯な努力によって身に付いた学びは、必ず皆さんのこれからの人生で助けとなってくれるはずです。

今皆さんは、卒業して新天地へはばたく喜びと共に、別れの寂しさを感じてもいることでしょう。「ほんとうに出会った者に別れはこない」谷川俊太郎さんの詩の一節にこのような言葉があります。白鷗での出会いは「ほんとうの出会い」であったことと思います。生徒としてはお別れですが、同窓会である「鷗友会」を通じて、これからも本校に心を寄せてくれると期待しています。まもなく創立130年にならんとする歴史と伝統ある白鷗高校の卒業生としての誇りを胸に、白き鷗のごとく美しく飛び立つ皆さんを見送り、白鷗はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。

卒業生の皆さんの健康と幸せを願い、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

平成二十九年三月七日
東京都立白鷗高等学校長 善本 久子